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西部A地区地区大会劇評②

9/18⑤朝霞高校『ハルシオン・デイズ』作:鴻上尚史

 『トランス』を下敷きに作者自身が書き直した台本です。
 雅之・和美(女医)・哲造(トランスジェンダー)が、自殺系サイトで出会う。
和美はかつて患者の明生を自殺させてしまった過去を持ち、2人の自殺を食い止めようとしている。
一緒に生活するようになった3人がいつしか内戦地の爆撃地帯の人間の盾となり、
近くの保育園へ慰問に行くために芝居『泣いた赤鬼』の稽古を始めて……。

 客電が落ちると、緞帳にプロジェクターの明かりが漏れていました。
緞帳が上がると、舞台に設置された手作りのスクリーンに美しい満月の映像。
緞帳が上がるまで、プロジェクターの明かりが漏れないように、レンズをふさいでおいてほしかったです。
スクリーンの前でのモノローグ。台詞に力がなくて残念でした。こちらまで届いてきませんでした。
私としては、月の映像に人物の影が入り込むのは、変だと思います。
 手作りのスクリーンは、枠組みがあって画像を映写するときだけスクリーンを開けたり閉めたりしました。
スクリーンを閉じたときには、白いスクリーンに黒幕を被せる気の使いようでした。
そこまでできるなら、手作りのスクリーンを使うのをやめる勇気がほしかったです。
動きやポジション取りがスクリーンに縛られてしまい、邪魔でしかなかったし、
映し出される映像も効果的ではありませんでした。特に赤鬼が出した立て看板の文章は、読みづらかったです。
 役者は、和美は声が大きかったけど、一人異質の手振りの多い芝居で変でした。
動こう、演技をしようとするあまり、不要な動きを芝居だと勘違いしてしまう役者がこの学校に限らずどの学校にも多いです。
明生がヘルシアを取ろうとする芝居も余計で、いらないです。
4人が横一列に並ぶことが多かったです。講評でも言いましたが、
しっかり台本を読んで誰が誰に向かって言っている台詞かをつかんで、
1人が3人に対して言っているのなら、そういう位置取りを舞台上に作った方が効果的です。
ポジション取りは難しいからそう簡単にはできないでしょうが。
現に、横一列でないときの曖昧な位置取りで芝居をすることが多かったです。
動き・位置取りの前に、しっかり台詞を言えるようにして、会話できるようにすることが先です。
雅之は女にしか見えませんでした。ウィッグつけてほしかったです。
明生の立ち姿に、見せる意識が足らなかったです。もっとしっかり佇んでほしい。
会話になっていない。台詞が客席まで届いてこない。台詞を受け取らない。
病院のシーンは、医者と患者の距離がスクリーンを間に挟むため不自然に遠すぎ。
最初の三日月の映像は、地球照が見えてはいけないのでは。
髪型は高校生のまま。爆弾は爆弾に見えなかった。小さいダイナマイト。
中央単サスの芝居を多用しましたが、中央単サスの芝居は、恥ずかしいです。
暗転が長かったです。ブリッジ曲も良くなかったです。


9/18⑥新座総合技術高校『第52回オカルト部会議』作:篠田美羽(生徒創作)

 瑞樹、美空、紫苑の3人は、オカルト部の部員。今日は、学校の七不思議の操作を行うことに。
すると花子さんと金次郎という幽霊が出てきて……

 残念ながら台本は成立していないできでした。設定(オカルト部と花子さん、金次郎)を決めて、
書き始めて、結局うまく行かなかったという感じでした。
とはいえ、40分とはいえ芝居を1本作るのはそう簡単なことではないです。
生徒創作は、7本中1本ですから、新座総合のみなさんは頑張ったのだと思います。
 しかし、最初の方から台詞が出ないことが多くて、練習不足に見えました。
台詞を覚えるのは大前提です。緊張に打ち勝つ稽古をするのも大前提です。
 台本について講評でも言いましたが、物語の前提がしっかり作れていないし、説明する台詞が多すぎです。
オカルト部の部員が花子と金次郎に質問するコーナーがありましたが、どれもこれもどうでもいい質問ばかりで、
オカルト部の生徒なら本当に聞きたいことは別にあるだろうと思いました。
 役者は台詞を相手に届けていない。客席に届けていない。台詞を受け取らない。この学校も横一列に並ぶことが多かったです。
 花子の靴(オカルト部員と同じ上履き)は、ダメです。花子の衣裳は小学生にしか見えませんでした。
豹変したときの変化を示してほしかったです。
 金次郎のYシャツは変だと思います。足には脚絆だと思いました。角材を背負っているのも変です。髪の毛も長いままでした。
 「やろう(野郎)」のイントネーションが気になりました。「(ゲームを)やろう」と同じイントネーションだったので。
今時の高校生は、そう変化してきているのでしょうか。
 台詞がないときに、芝居に関係なく上手の隅で適当に2人(美空と紫苑)で遊んでいることが何度かありました。
棒立ちしているのを嫌って、工夫して芝居したのかも知れませんが、それは間違っています。
しっかり邪魔にならないように芝居に参加する(台詞を受けとる)べきだと思います。


9/18⑦新座柳瀬高校『Love&Chance!』作:稲葉智己(顧問創作)

 オランド伯爵の家に娘のシルヴィアとお見合いするために貴族のドラントがやって来る日、
シルヴィアは世話係のリゼットと入れ替わって、ドラントの本性を見定める作戦に。
しかし、やってきたドラントはリゼットと恋に落ちてしまう。一方、リゼットになりすましたシルヴィアは、
ドラントの従者アルルキャンと恋に落ちてしまう。

 徹底したラブコメディです。ですので、この芝居を見終わったときに、
観客が幸せな気持ちに包まれれば上演する側の勝利だと思います。
 緞帳が上がって、中央エリアへの前明かりの入れ忘れという残念なスタートでした。
大道具や衣裳はとりあえず立派でした。女性のドレスが、もっとそれらしい派手なものだったらよかったのに。
 6月のコピスの劇評でも書きましたが、ドラント役の役者(女子)は、
立ち姿も綺麗で一番台本に合った宝塚っぽい芝居ができるのですが、
残念ながら背が低い。この芝居は、シルヴィアとドラントが、
みすぼらしい姿をしても、綺麗で格好良く見えないと成立しないと私は思います。
格好いい男性は、背も高くないと。
 全体的に早口でした。台詞は明瞭でしたが、芝居のスピードとしては少し早すぎると思います。
でも、この台詞量で60分に以内にするためには仕方がないことなのでしょう。
75分ぶんぐらいの台詞量があります。私としては、台詞削ってほしいなと感じます。
 コピスでもそうでしたが、エリアを細かく区切って、そこでだいたい2人で芝居をするので、
役者はとてもやりやすいという作戦は見事ですが、
たぶんこの新座柳瀬の役者だけが唯一背中で相手の台詞を受けることができます。
ただし、大広間のシーンで役者が全員集合すると、台詞のない役者の中には、待ってしまっているだけの人がいました。
マリオとジュスタンの区別はしづらかったです。オランドよりもアルルキャンの方が貫禄がありました。
オランドに貫禄をつけてほしいです。
 使用した音楽はあまり効果的ではありませんでした。
 台本の問題点ですが、
私にはシルヴィアの魅力が伝わってきませんでした。なので、ドラントがシルヴィアを好きになる理由がわかりませんでした。
シルヴィアとドラントが相手の正体をお互いに知って、愛を確かめ合うというエンディングは、
私の気持ちを幸せなものにはしてくれませんでした。
わがままな金持ちどうしの恋愛譚を見せられたって、幸せな気持ちになる人はいないです。
なので、残念ながらこのお芝居が芝居のカタルシスを味あわせてはくれないのではないでしょうか。 

クチオくん、誕生日おめでとう!


Commented by 稲葉智己 at 2016-09-20 01:57 x
いつも暖かい劇評をありがとうございます。また、今回は特に週末は審査とご講評、ありがとうございました。

決して、決して、ヒールだなんて思っていませんm(_ _)m

今回の劇評では作品作りをしていると、慣れや思い込みなどで見失いがちなことがたくさんあるなぁ、とツクヅクと感じさせていただきました。

物語の結末については原作通りなのですが、ひょっとしたら翻案の際に見落としている関係性や伏線があるかもしれないので、せっかくの機会なので宙に浮いた期間を利用して洗い直してみようと思います。
Commented by kawagoenishi at 2016-09-20 08:48
コメントありがとうございます。
また、思ったことストレートに書いてしまいました。
決してディスっているわけではありませんので。
                     mom

by kawagoenishi | 2016-09-19 20:57 | 演劇 | Comments(2)

高校の演劇部の顧問のほぼほぼ日記です。