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大宮地区地区大会劇評②

10/9④大宮商業高校『BANANA'S BIRTHDAY BASH』作:楽静
 これまで、楽静さんの台本を批判し続けてきましたが、この台本は読んでイイなと思いました。
なので、舞台を楽しみにしていました。
 演劇部を舞台にした姉妹と母の話。妹の誕生日を演劇部員たちが祝おうとしていたら、
妹にだけ過保護な母が乱入してきて……。
 舞台は演劇部の部室。なのにホリゾント幕でした。しかもホリ幕に色が入らないのは2重にダメです。
大黒にすべきだし、ホリ幕なら色を入れるべきです。
 最初にエモトのDJシーンから始まりましたが、マイクが必要でした。その後暗転が長かったですが、不要です。
演劇部の部室に単サスを落として、そこでエモトが演じるので十分です。
エモトを演じた役者さんは、絶えず動いていました。動かないと緊張するからなのか、
それが達者な役者だと勘違いしているのか判らないですが、もっと落ち着いてしっかり立って芝居をできるようにしてほしいです。
声も高く台詞回しも棒台詞でした。ということは、必要以上に緊張していたのでしょう。
 全体的に1年生と2年生の演技に差がありました。私としては、姉のサナエは、2年生が演じてほしかったです。
すごく難しい役だし、この大会は2年生のための大会なのだから、2年生が芝居を支えるべきだと思います。
 部長のアコは、声が良かったです。ただし、立ち姿が前傾姿勢になりやすかったです。
 妹のミナコは、もっとおとなしい感じ、弱々しい感じがほしかったです。
 母さんは、もっともっとイヤなモンスターペアレントにしてほしかったです。
 チエとハナは、違いがわからなかったです。どうやったら個性が出せるか考えてください。
 これは台本のせいですが、誰が何年生なのかとてもわかりずらかったです。でも、役者の役作りもあると思います。
 ウキタ先生も、あまり先生っぽくなかったです。衣裳ももうちょっと色がほしかったです。手を前で組むことが多く、
芝居が単調でした。
 こういう芝居で、センターに移動して正面向いて台詞を言うのは不自然です。
 バナナは、せめて袋に入れるべきではなかったでしょうか。
 場当たりができている箇所もありましたが、全員横一列に並んでしまうこともありました。
 せっかく椅子があるのにどうして誰も座らないのでしょう。座った方が、芝居が楽になるのに。
 劇中劇のシーンで、ホリゾント幕に火山のイメージの色を入れるのは、芝居としては不自然でした。
 作者が工夫して、時間がかかる転換が必要な箇所に台詞を書いたにもかかわらず、
長い暗転をして転換が終わってから、転換のための芝居を始めていました。(P.72)
 他の学校にも言えることですが、芝居が全体に同じテンポで行われてしまいますが、
この芝居で言えば、特に最後の母の名が台詞は、
間合いをとってしっとりとした芝居にしてほしかったです。


10/9⑤上尾南高校『コンバット・マーチ』作:石原哲也
 高校受験のために吹奏楽部を辞めなければいけない中学生と、
不本意進学した高校で不登校気味になり落第してしまう高校生が出会い、それぞれの進むべき道を考えるお話。
 とても古い台本なので、時代をどう引き寄せるのか難しい作品です。
 オープニングは、綺麗なシルエットで良かったです。ただし、曲に『イエスタデイ』を使ったのは疑問です。
母の衣裳も、見えづらいとは言え、娘の七五三に着ていきそうな服装にしてほしかったです。
千歳飴の投げ捨て方は下手でしたが、母が娘にしっかりとビンタしたのは良かったと思います。
 大道具は、防波堤が綺麗でした。今回のAブロックで一番のデキでした。汚しが見事で、単純なプラットホームにせず、
一番下手の山台だけが斜めになっていました。ただし、ゴミ箱にも汚しがほしかったです(借り物で不可能だったのかも知れませんが)。
 芝居は、役者が皆、一様な台詞回しでした。しっかりと、はっきりと言葉を発する。文章は切り過ぎ。
ほとんど場所の移動はなく、その場で台詞を言い続ける。それを最後まで通していました。
すごく練習しているのは感じられます。役者のみなさんが真面目なのも伝わってきます。
でも、それはどうなんでしょうか。私はずっと違和感を感じました。
 これは勝手な想像ですが、指導者の指示に従っているのかなと思ったのです。
大道具がとても良くできて、役者の芝居が堅すぎるからです。なので、やらされているのかなと思ってしまいました。
 芝居の冒頭で、トランペットのマウスピース?が取れて舞台を転がりましたが、
最後までそれが舞台上に放置されていました。それを見て予定外の芝居ができないのかなと思いました。
 もっと自然な会話、言葉のやりとりをしないと、観客は芝居の世界に入り込めないのではないでしょうか。
生身の人間ではなく、芝居の型を見せられているように感じるからです。
 私は、役者たちが指導者(や演出家)を超えて芝居をするようにならないと、
観客は本当には楽しめないと思います。


10/9⑥伊奈学園総合高校『眠りの切り札』作:樋口美友喜(樋口ミユ)
 数年前の春に西部B地区で芸総が上演した作品です。そのとき私にはストーリーが理解できませんでした。
でも生徒たちは褒めていました。それは自殺の話だったからかも知れません。
 アロマセラピーの香とニュース記者の遼の夫婦が疎遠になっていく話と殺人者である純と不眠症で事件の目撃者の杏の出逢い、
そしてそれらがトロイの木馬についての芝居を上演する高校生たちを絡めて眠りを巡って語られる作品です。
 渡された台本と上演された台本がだいぶ違いました。しっかりテキストレジが終わった台本がほしかったです。
それは審査員としての要望ではなく、コンクールとしての義務だと思います。
台本の誤字も多かったです。そういう点にも気遣いがほしいです。
 上演されたテキストレジで、香と遼のシーンをカットし過ぎだったと感じました。
でも上演時間がギリギリだったので、仕方がなかったのでしょうか。もっとしっとり演じて欲しいシーンも流されてしまっていました。
 舞台は、初めての大黒幕で、中割幕もせめていて、舞台の使い方を知っている演出です。
大道具は、同じ灰色に統一されていて良かったです。ですが、段ボールで作られた柱には疑問を感じました。
段ボールにしか見えないと、質感的に安定感が損なわれるからです。頑張って木材で作ってほしかったです。
 それなりにしっかりした大道具でしたが、シーンが多くて、それをどのように舞台上に描くのか難しいだろうと思いましたが、
実際その通りでした。照明の使い分けと演じる場所の使い分けの統一感がありませんでした。
限られた単サスで処理しきれなかったのかも知れませんが、そこをどうにかしないと、見る側は混乱するばかりです。
前半は、それなりにできていたのですが、後半はひっちゃかめっちゃかという感じを受けました。
たとえば、カッター明かりだけ、前明かりの単サスだけ、どちらも点けるで3通りの使い分けができるのに、
すべてカッター明かりと前明かりを一緒に点けていました。もったいないです。
 SE、MEの使い方など音の使い方はこの地区で唯一良かったです。
 香は、難しい役でしたが、いい雰囲気で演じていました。すごく良かったけど、この役にはもっと深みが必要だと思います。
一方の遼は、バタバタしてしまっていました。動きすぎです。妻に対して無頓着な仕事人間という造形は作れていませんでした。
 杏にはもう少し台詞に力がほしかったです。というか素直すぎる演技で、芝居の芯を支えるだけの存在になりえていませんでした。
眠りを拒否した女子高生、トロイの木馬の芝居の演出家、芝居の中では指揮官、殺人事件の目撃者
どれもそれだけでも演じるのが難しい役柄を演じなければいけなかったはずです。それがどこまでできていたでしょうか。
それはすごく難しいことですが、それができなければこの芝居は成立しないと思います。
 造形的に一番疑問だったのは、純です。動き過ぎで、動きを抑えてもっと内面の表現をしてほしかったです。


10/9⑦大宮高校『花の境界線』作:尾道太郎
 たぶんネット台本です。
 ひとかたと呼び合う3人が、言葉?を食べながら生きてきて、
宗教の人や作家と出会い新たな生き方を見つけていく物語だと思います。
 でも台本のまま芝居にしてもたぶん、ドラマにならないだろうと思っていたらその通りになりました。
『星の王子さま』は素敵な物語だけど、そのままでは芝居にならないだろうと思います。
台本を読んで『星の王子さま』を想起しました。だからといってそれほど素敵な物語ではないです。
 唯一のライトオープンでしたが、舞台中に明かりを点けると、緞帳が薄いために、
客席に明かりが透けて見えるので、正直雰囲気が台無しでした。ライトオープンできない劇場なのでした。
 ひとかたが、何を食べているのか演出的に判らなかったです。言葉?書かれた文字?話された文字?
それらを台本に従って演じるので、見ている方は混乱します。台本のせいではありますが、
上演するにあたっては考えるべきだったのではないでしょうか。
途中台詞のない役者が本を読んでいましたが、それは食事をしていたのか読んでいたのか。
そこに文字が書いてあるなら、食べるものがなくなったという設定とどういう整合性を考えているのか。
 舞台上に白い箱をたくさん置きましたが、あまり使われませんでした。
 SEのトイレのがカットアウトで変でした。ドアが開くSEはありましたが、閉まるSEはありませんでした。
そもそもドアがあるような空間だったのでしょうか。BGMが時々流れましたが、その必然性は感じられませんでした。
宗教の人はサンダル履いていましたが、作家は靴を履いていませんでした。
 箱に座っての芝居でしたが、座って安心してしまったのか、動きは生まれませんでした。
座ると安心してしまうからでしょうか。もっと箱の数を減らしてアクティングエリアを確保するべきだったのではないでしょうか。
ただし、アクティングエリアがあったとして、動けたかどうかは別の問題です。


by kawagoenishi | 2016-10-10 20:59 | 演劇 | Comments(0)

高校の演劇部の顧問のほぼほぼ日記です。

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